大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和29年(あ)2705号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人渡辺卓郎の上告趣意第一点について。

所論は、第一審判決が証拠として採用した検察官作成の供述調書について違法がありとし、これを理由として憲法三一条違反及び東京高等裁判所判例違反を主張する。しかし検察庁法三六条により検察官の事務取扱を命ぜられた検察事務官は、検察官としての権能を有するものであるから、検察官事務取扱検察事務官の作成した供述調書は、結局検察官作成の供述調書にほかならない。従って本件において第一審判決が、所論指摘のように証拠の挙示において、単に「検察官作成の……供述調書」と表示したことは不正確たるを免れないが、このことをもって直ちに違法ということはできない。結局所論違憲の主張は前提を欠くことに帰し採用のかぎりでない。また所論の判例は、単なる検察事務官作成の供述調書に関する事案であって、本件のように検察官事務取扱検察事務官作成の供述調書に関するものでないから本件に適切でない。

同第二点について。

所論は量刑不当の主張であって刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

その他記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小林俊三 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 本村善太郎 裁判官 垂水克己)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例